ごあいさつ
転倒予防の運動について
○転倒
・転倒により54~70%に外傷、6~12%に骨折が起こる。
・約60万人が骨折・転倒により要支援・要介護状態になる。
○転倒予防の運動療法
・バランス運動と筋力増強運動を中心に、柔軟性運動、持久性運動、立ち上がり・歩行などの機能的運動を複合的に行った方が効果が期待できる。(バランス運動には、静的バランスと動的バランス、二重課題などの要素を含める。)
・1日60分、週2~3回、2~3ヶ月の運動療法が有効。
・個別の種目や運動強度については不明な点も多い。
*個別性を考慮しないグループトレーニングでは、転倒リスクの軽減の効果が認められなかった。
<柔軟性トレーニング>
○種目:
持続的伸張またはPNFを用いたストレッチ
○強度:
つらくなく、軽度の緊張感のある程度
(ストレッチされて気持ちが良い程度の伸張を感じながら)
○時間:
10~30秒の持続的伸張、PNFでは6秒間の筋収縮に続く10~30秒の他動的伸張
○回数:
各筋群を各3~4回
○頻度:
2~3回/週以上
<高齢者の筋力トレーニング>
○種目:
殿部筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、胸部筋、広背筋、三角筋、腹筋などの主要な筋群を対象に8~10種目以上行う。(運動例参照)
○強度・反復回数:
10~15RMで、主観的運動強度12~13(ややきつい)くらいになる強度
○頻度:
少なくとも2回/週の頻度でトレーニングし、同じ筋群のトレーニングは2日以上間隔を空ける。
<持久性トレーニング>
○種目:
歩行、ハイキング、ジョギング、水泳、サイクリング(エルゴメーター)、軽いスポーツやレクレーションなど大きな筋群をリズミカルに使用して、長い時間出来る運動
*筋力増強運動や機能練習を、回数を多くしたり、休みをとらずに行ってもよい。
○強度:
・最大心拍数(HRmax)の60~90%、低体力者: 55~64%
・Borg指数(主観的運動強度):11(楽である)~13(ややきつい)
○時間:
少なくとも10分以上で、1日の合計で20~60分の間欠的または持続的な有酸素運動(10~20分を1セットなど)
○頻度:
3~5回/週
<バランストレーニング>
○静的バランス練習:
・片脚立ちなど狭い支持面での姿勢保持
・閉眼、バランスマット上での姿勢保持
○重心移動運動:
・座位や立位での前後・左右へのリーチ
・ボール渡し、ボール投げ、輪入れ
○ステップ運動:
・前後左右斜め方向へのステップ
・ステップを伴うボール投げ(マジックテープのついたボード)
・バトミントン、フリスビー
○二重課題:
・ボールを蹴りながら歩く
・計算をしながら歩く
・トレイに物を載せて歩く
○ボディイメージを高める運動
・狭い所や低い所を通る。
・床の上の印に合わせて足を踏み出す
○姿勢や運動の変換運動
・起き上がり、立ち上がり
・方向転換、急な停止と開始
○歩行練習
・継足歩行、後ろ歩き、横歩き
・障害物を置いた歩行(跨ぐ、避ける)
・速い歩行、遅い歩行
○感覚調整
・閉眼での運動
・頸部を回旋
*1種目5~10分、休みを入れながら複合的に行う。
*少し難しい課題を繰り返し行う中で、運動学習(神経の可塑性)を促す。
*バランス能力を構成する要素(筋力、柔軟性など)で低下しているものがあれば、その改善を図る。
*重心を移動できる範囲、1歩でステップできる範囲を拡大し、身体動揺は減少させる。
*課題や環境を変えて段階的に適応力の向上させる(二重課題、スピード、環境)。