ごあいさつ
体幹トレーニング
<体幹とは?>
体幹という言葉に明確な定義はなく、「人間の身体の頭部と四肢(両手足)を除いた部分」であったり、「腹部周りだけを指す」場合もあり様々な解釈があります。
また、体幹筋は、身体を動かす筋力(表層筋)と、身体を支え安定させる筋(深層筋)があり、それらが連動して働き、身体を支え土台が安定することで、動かす筋力が思い通りに発揮されます。
ここでは
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コアとは、腰部―骨盤―股関節の集合体である。
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コアとは、重心が位置するところであり、全ての運動が開始するところである。
という定義でお伝えしますが、
簡単に言うと「腰腹部の安定性」と思って下さい。
<コアの解剖学>
多裂筋という脊椎についている筋肉(コアの後ろ)、腹横筋という腹巻のようにお腹についている筋肉(コアの主に前)、骨盤底筋という骨盤の底を支えている筋肉(コアの底面)、横隔膜という呼吸で特に息を吸う際に働く筋肉(コアの天井)に囲まれた箱をコアと考えます。
ドローインという息を吸い、胸を膨らませ、お腹を凹まし絞り込む動作を行うと、このコアの内圧が高まり体幹の安定性が高まります。そうすると肩甲帯や骨盤の運動性と安定性につながり、身体をより思い通りに動かしやすくなり、バランス能力などの向上にもつながります。
コアがしっかりと働いていないと腰椎が反り、猫背や首の反りも強まります。さらに、図の赤い部分:腰と足の付け根の前側が縮こまり、硬くなりやすくなります。そして、その反対側の青い部分:お腹とお尻の筋肉は弱化します。上半身に関しても、猫背で両肩は前に出て胸の前側は硬くなり、首後ろの筋肉は硬くなりやすいです。それに伴って反対側の肩甲骨周囲と首の前側の筋肉は弱化します。
<体幹トレーニングの効果>
1.ぽっこりお腹の改善、内臓を適切な位置に修正
お腹周りの筋肉が衰えてくることで内臓や脂肪が重力によって垂れ下がってきてしまい、下っ腹がぽっこりと出てきてしまいます。また、胃下垂など内臓の位置がずれることによって便秘や消化不良が生じやすくなります。それらに対し、お腹周りを覆っている腹横筋と言われる筋肉がコルセットのようにしっかりと働くことで、内臓を適切な位置に修正し、ぽっこりお腹の改善が期待できます。
2.姿勢矯正によるケガ、腰痛・ヘルニア・肩こりの予防
不良姿勢や骨盤・脊柱の歪みが生じると特定の筋肉が硬くなり、血流も滞りやすくなり、こりや痛み、疲労しやすいといった症状につながります。また、体のアンバランスさから膝や足の関節痛や五十肩、捻挫・靭帯損傷などのスポーツ障害を引き起こしやすくなってしまいます。それらに対し、姿勢が改善することで硬くなっている筋肉は緩み、血流が改善することで筋肉のコリや痛み、疲労などの原因となる物質も代謝されやすくなり、症状の改善につながります。
3.引き締まった体、くびれをつくる。
上記のように腰回りは腹横筋によりくびれを作る効果が期待されます。また、広背筋(背中からウエスト)や殿筋(お尻)、大胸筋(胸)の筋肉が働きやすくなり、後ろ姿のシルエットが美しくなったり、バスト・ヒップアップなどスタイル改善の効果も得られやすくなります。基礎代謝量も若干ですが向上するので、太りにくい体質になる効果も期待できます。
4.スポーツのパフォーマンスアップ、日常生活がアクティブになる。
体の中心の安定が得られやすくなるので、手足や全身を思い通りに動かしやすくなります。また、下半身で生み出した力を体幹や手に効率よく伝達することができ、パワーやスピードの向上が期待できます。さらには、スポーツや格闘技でぶつかり合った際にバランスを崩さない、ボールを速く投げる、強くける、といったパフォーマンスアップにつながります。
5.中枢神経疾患(脳梗塞、パーキンソン病など)の
姿勢・運動コントロールの改善
脳梗塞による片麻痺やパーキンソン病の方のすくみ足を助長している背景には、体幹の安定性低下が関連しています。体幹の安定性と運動性を高めることで、麻痺のある手足が動かしやすくなったり、体が前のめりになり足がすくみやすかった歩行が改善する効果が期待されます。また、肩甲帯の運動性が向上することでバランス能力のアップと転倒予防につながります。