ごあいさつ
脳梗塞・脳出血の方はどんな症状がでて、関わる時に何に注意すればいいの?
脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血・脳腫瘍・脊髄損傷・パーキンソン病などの中枢神経疾患における症状を理解し、リハビリテーションや予防・コンディショニングなどで関わる際にはそれらに配慮することが大切になります。
○運動麻痺・バランス障害
・病巣と反対の上下肢の運動麻痺が生じます。
・上下肢の麻痺により、足を引きずったり、膝折れによるつまずきや転倒の危険性があります。
・動作を努力的に行っていたり、バランスをとるために、非麻痺側が過緊張になっていたり、麻痺側の痙性が強まっていることがあります(場合によっては足が震えていることもあります)ので、必要に応じて楽に行えるよう介助を行います。ただし、本人様のプライドに配慮し、声掛けを行います。
・介助をおこなう際には、無理に手を引いたりすると外乱刺激となることもあるので、声掛けをしながら、ゆっくりと対象者様の動きに合わせて行います。
○感覚障害
・冷たい・熱いといった温度や温度がわからない場合があるので、物理療法等を行う際には注意します。
・痺れなどの異常感覚を呈している場合には、接触により増強させてしまうことがあるので注意します。
・立ち上がる際に自身の足底がしっかり床についているか等下肢がどうなっているかわからないので動作時に注意を促し、転倒に注意します。
○運動失調
・小脳や脳幹の障害で生じることがあります。
・麻痺の程度は軽くても、上下肢や体幹等の運動の調整がうまくいかなくなり、座位や立位でふらふらしたり、物をうまくつかめなくなることがあります。
・特に立位や方向転換等の際に、バランスを崩すこともあるので注意する。
・動作はゆっくりと行うように声掛けや介助を行います。
○言語障害
a.運動性失語(ブローカ失語)
・指示は1度に1つとします。
・文章は短く、分けて伝えます。
・質問は、「はい」「いいえ」で答えられるように聞きます。
・注意深く、思いやりを持って聞きます。
・発話はとても苦手なため、無理に発話は引き出さず、本人からの訴えには落ち着いて対応し、表情や状況から推測します。
・聞き手としては、「体に関すること」、「家族に関すること」、「リハビリに関すること」など、まずどの領域について話したいと思っているかについて質問し、話の内容を徐々に絞っていく工夫が必要となります。
・対象者様の直前の行動や日頃の行動パターンから現在の要求を予測し、質問項目を選択するのも1つの方法となります。
・必要があれば絵カードを利用します。
*理解力は比較的保たれているので、失語症の程度がどのくらいかを考えて声掛けや誘導を行います。
b.感覚性失語(ウェルニッケ失語)
・程度の差はありますが、理解障害が強く言葉の意味が理解できません。そこで、言葉で話しかける際に大切なことは、1度に沢山の情報を入れないこと、単語で短く区切ってゆっくりと話す事、できればジェスチャーや具体的な写真や絵を用いて話します。
・発話は錯語が多く別の言葉になり、自分の要求がなかなか伝えられません。したがって対象者様の言葉は否定せずに、受容して聞いていきます。
・どうしてもわからないときは、素直に謝ることも必要な場合もあります。
c.構音障害
顔面や舌などの構音器官の麻痺による発音の障害(不明瞭な発音となる)が生じます。まず、聞き取れない場合はゆっくりと繰り返し発音するように促し、推測しながら関わります。
○認知症
・記憶障害や判断力の低下を呈します。
・1度に多くの情報を与えないようにします。
・トイレの位置などがわからなくなることもあるため、困っている様子が見られたら声掛けや誘導を行います。
・今日は何をしたか、食事をしたか、リハビリを行ったかなどを覚えていることが難しいため、スケジュールを紙に記載するなどしながら関わります。その際には、その時その場で一緒に内容を確認しながら行います。必要な場合はメモを渡します。
・錯話(現実とは異なる関係のない話)をすることもありますが、否定せずに対象者様の現実を尊重し応対します。
*認知症の程度がどのくらいか考えながら、声掛けや誘導を行います。
○注意障害
・バランスを崩すような動作であっても自ら行おうとしてしまうことがあります。
・一人で立ったり、歩かないように指示しても、目を離すと行ってしまうことがあるので注意します。
○左半側空間無視(右も有り)
・右側から話しかけたり、物を渡したりします。
・注意を促す場合には徐々に左側から話しかけるようにします。
・上着を着る際には、左側の袖を認識するように声掛けを行います。
・車いすの左側のブレーキを忘れることがあるため、ブレーキの柄を長くしたり、目立つ色のテープを貼ったりします。
・左側の障害物や人にぶつかることがあるので注意を促します。
・左側に曲がることが難しい場合があるので声掛けを行います。
*無視の程度がどのくらいか、どうすれば認識できるかを考えて声掛けや誘導を行います。
○半側身体失認(左>右)
・ベッドで寝る時に、麻痺側の上肢が体の下に入り込んでしまうことがあるので注意します。
・麻痺側の左上下肢を自覚していないため、急に立ち上がった際に転倒する危険性があるので注意します。
・麻痺側の左上下肢を自覚していない為、障害物にぶつけて怪我等しないように注意します。
○同名半盲
・側頭葉から後頭葉に進展する病巣を認めた場合、病巣と反対側の視野の障害が出る可能性があるので注意します。
・視野障害がある場合は、見えない側がぶつからないように注意します。
○麻痺側肩関節の痛み
・服の着脱には肩関節を過度に曲げたり、引っ張らないように注意します。基本は「脱健着麻」(脱ぐ時には健側(非麻痺側)から行い、着る時には麻痺側から行います。)で行います。
○聴覚・視覚機能の低下
・どちらの耳が聞こえにくいかを把握し、大きな声ではっきりと声掛けをします。
・見えにくい方には段差や書面などを見せる際に、声掛けや説明をはっきり行います。
○呼吸・循環機能の低下
・心疾患の既往等や脳血管障害の影響による易疲労性を呈していることがあるので、負荷量には注意します。
○骨折、表皮剥離、その他
・骨粗鬆症や浮腫等の循環障害等を合併していることがあるので、関節を動かす際には体へのふれ方、力の入れ方に注意します。
*この他にも様々な症状を呈している方々がおられますので、その都度症状に合わせた対応を行う必要があります。